
ウマ診断薬「馬糞便中の炭酸脱水酵素CA-1、CA-2測定キット」の開発
一般講演 第2日目11月28日(火)一般講演Ⅴ(No.28) 第2会場 Room115: 11F
前田雅弘 株式会社免疫生物研究所
萩原静夫 株式会社サンライズテック
【目的】
ウマ、特に競走馬の胃潰瘍を主に、腸炎などの消化器の異常(微量な出血など)を広く検出すること(スクリーニング検査あるいは治療後の効果判定)を目的として、炭酸脱水酵素CA-1、CA-2の測定キットの開発を行った。
【概要】
日本の競走馬の多くは、高度なストレスにさらされているため胃潰瘍にかかっており、その診断のためのマーカーとして、糞便中のCA-1が有用であるとの報告がある(麻布大学獣医学部 西田利穂准教授ら)。
そこで、西田らの開発したウマ糞便中の炭酸脱水酵素CA-1、CA-2測定系を基に、特異的抗体を用いたELISA (Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay) 測定系を開発した。
これを用いて、健常馬、胃潰瘍、腸炎、ストレス馬などの病態馬の糞便中のCA-1、CA-2濃度を測定した。糞便から抽出液を調整し、CA-1、CA-2濃度を測定するとともに、総タンパク質量も測定し、CA-1、CA-2濃度を補正した後、比較検討した。

【結果及び考察】
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腸炎を伴う馬においては顕著に高値のCA-1、CA-2が検出され、タンパク補正前のCA-1濃度だけでも診断的意義が見られた。
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胃潰瘍ではタンパク補正後のCA-1とCA-1/CA-2において、健常に比べわずかに高い値になった。
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腸炎の場合はCA-1/CA-2の値が低い結果となり、胃潰瘍と腸炎の判別においては、CA-1/CA-2の値が参考となった。
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ストレス馬については、健康馬と区別するのは現在の測定系では難しいと思われた。
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胃潰瘍での治療薬の治療効果については、CA-1の値が下がる傾向にあるが、今後プロトコールによって厳格に管理された検体を使う必要があると思われる。
※これらの結果から、競走馬の日々の健康管理のバイオマーカーとして、
糞便中のCA-1、CA-2の測定は有用であることが示唆されました。

<謝辞>
ウマ糞便検体は、競走馬総合研究所 臨床医学研究室 黒田泰輔先生よりご提供いただきました。
深く感謝いたします。
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